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健康診断で当たり前のように行われている尿検査。ですが、その尿検査だけでも私たちの健康状態を知るざまざまな情報が沢山入っています。

尿の色、泡、回数などで、どんな病気の疑いがあるのか知っておくことで、自宅でも自分の体の健康チェックができます。

尿で分かる病気

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尿は、腎臓にある糸球体で血液にある老廃物がろ過されて作られます。必要な水分や栄養は尿細管で再び吸収されます。不要になった残った水分は膀胱で貯められ体の外に排出されています。そのため、尿にはいろんな成分が含まれおり、カラダに関する様々な健康に関する情報を知ることができるのです。

わたしたちが行っている健康診断などの尿検査では尿沈渣が行われます。尿沈渣では、尿を遠心分離機にかけます。すると白い沈殿物が底に溜まります。その白い沈殿物を顕微鏡で見ると、その人の体の状態がわかる情報を知る事が出来るのです。

尿はなぜ黄色いのか?

尿の原料は血液です。赤血球が寿命になると肝臓で分解されてビリルビンと言う物質になります。それが腎臓で一部酸化されると黄色いウロクロームと言う物質になります。このウロクロームが黄色なんです。

このウロクロームが1日に出る量はほぼ一定で、水の量が少ないと濃縮されているので濃くなり、水分の量が多いと黄色が薄くなりますが、実際には様々な尿の色があり、その色だけでも病気の疑いがわかるのです。

尿の色で疑われる病気

尿はカラダのサインと言われています。自分の健康状態を知るには、毎日の尿の色を見てチェックすることが大切です。

■透明に近い色の尿
尿崩症の疑いがあります。尿の量を調節しているのが抗利尿ホルモン。しかし、このホルモンが腎臓で効かなくなったり、分泌量が減ってしまうと大量の尿が出てしまいます。1日に出ている尿の量は1日で1,5ℓと言われていますが、尿崩症になると1日に3ℓ以上でてしまうのです。その為、尿の色が透明に近いのです。


また、尿崩症の患者さんを調べると、脳腫瘍が見つかる事が多いと言われています。抗利尿ホルモンは、脳の視床下部でつくられており、そのあたりに腫瘍が出来ると抗利尿ホルモンの分泌が低下してしまうのです。水をたくさん飲んでいないのに、尿が出ている人は要注意。


糖尿病の場合も尿の量が増え、色が薄くなる場合があります。

■乳白色の尿
膀胱炎の疑いがあります。白く濁っているのは白血球が細菌と戦った為、白血球がたくさん出ていると透明度が無くなり白く濁ります。それを脳尿といいます。痛みがあり、乳白色の尿が出てきたら膀胱炎の疑いがあります。


また、腰が痛くなったり、発熱がある場合は、腎盂腎炎の可能性があるので注意しましょう。

■血尿
血液が混じっている血尿、このような血尿が出た場合は、腎臓から膀胱までに異常がある場合があります。血尿が出るタイミングで、どこに異常があるのかある程度分かると言います。


最初の尿だけ赤い場合は尿道からの出血。


最初から最後まで血尿が出ると、膀胱に溜っている尿にすでに血液が混ざっていることが考えられます。排出しているときに痛みがある場合は、腎臓に結石が詰まり炎症が起きて血尿になっていることもあります。
また、痛みが無く症状が無いのに血尿がでた場合は膀胱がんや腎臓がんの疑いがあります。直ぐに病院に行き診察を受けましょう。


point注意点!
血尿は、一度出ても治まってしまう事があります。ですが、目では分からなくても顕微鏡で見ると血液が出続けていることがありますので、一度でも血尿が出たら直ぐに病院に行きましょう。

■オレンジ色の尿
オレンジ色の尿は肝臓の状態が悪い場合があります。肝硬変、肝不全の疑いがあります。肝臓が悪いと、ビリルビンがたくさん出てきてしまうのでオレンジ色に近い尿になります。
緑色の尿
敗血症の疑いがあります。緑膿菌が原因の時にこの色の尿が出るそうです。緑膿菌は自然の中に広く分布しており、毒性が低くので健康な体の時には感染しませんが、手術後など感染すると重症な感染症として認識されています。

尿の泡立ちで疑われる病気

尿が泡立っていると言う経験はありませんか?
尿には界面活性作用がある「ウロビリノーゲン」という物質が含まれているので泡を作る作用があるそうです。ですので健康な人も泡立つときがあります。ですが、健康で正常な時の泡はすぐに消えます。

ですが、30秒以上たっても泡が消えない場合は、尿にタンパク質や糖が入っている可能性があります。腎臓の病気や糖尿病の恐れがあります。

トイレの回数で疑われる病気

1日にどの位の回数、排尿でトイレに行くと頻尿と言うのでしょうか?
1日に出ている尿の量は、およそ1,5ℓと言われています。基本的には、昼5回位、夜0〜1回が平均的な成人の排尿の回数と言われていますが、しかし、状況によって違い個人差があります。

昼8回、夜2回の10回を超えると頻尿の目安とされていますが、明確な基準が決まっているわけではありません。

男性が排尿でトイレの回数が多い場合は、前立腺肥大症の可能性があります。女性の場合は過活動膀胱の疑いがあります。

また、尿の回数が少ない人の場合は、尿を我慢しすぎて、尿をしたいと言う感覚が鈍くなったり、尿を押し出す力が弱くなっていることが考えられます。しっかり水分を摂って、トイレを我慢しないようになるべく行くようにしましょう。

【最後に】

現在、尿検査では、白血球、赤血球、細菌などから顕微鏡で分かる病気だけを調べています。ところが、尿のアミノ酸から作られるタンパク質とペプチドの種類を調べることで今まで以上に様々な病気を発見することがわかってきたそうです。

この、研究が実を結べは、尿検査だけで様々な病気がわかるようになるそうです。現在、研究が進められており9年計画の3年目なんだそうです。将来は、尿検査だけでストレスがどの位あるのか?筋力がどのようにして低下していくのか?など、家庭の中でも検査が出来たら、将来は介護の要らない社会が実現するのではないか、そんな社会になる事を目指して研究をおこなっているそうです。

痛くない手軽にできる尿検査だけで様々な病気が分かる。そんな夢のような時代が現実になるのもそう遠くないんですよ。凄いですね。

参考:この記事は、TV番組『ゲンキの時間』より、日本大学医学部付属板橋病院 副病院長 頻尿器科部長 高橋悟先生の解説を参考にしています。